初心者のための機械の安全使用
小型管理機編
 今号は小型管理機の安全使用について述べさせていただきます。
 管理機とは広義に定義する場合と狭い意味で使う場合とがあります。広義には専用機として使われている田植機や移植機なども管理機に含む場合もありますが、今号では耕起、砕土、畝たて、中耕除草等の狭い範囲での作業中の安全について述べさせていただきます。
 作業前や作業後の点検・修理、取扱説明書の熟読等は既に他の機械にて説明していますですので省略させていただきます

1.PTO駆動と車軸駆動の特長をマスターしましょう
 
 管理機による作業は歩行作業が多く、また畝をまたいでの作業や条をずらしての作業など作業姿勢が不安定なままでの長時間、過重作業を余儀なくされることが多くあります。
 このため、管理機そのものの走行性が作業者の負担の軽重に影響を与え、ひいては安全作業に重大な結果を残すこととなってしまいます。
 機械の特長を十分に把握し、適切な操作に心がけましょう。

動力取り出し軸(PTO)での作業

車軸動力を利用した作業
 PTO軸作業は車輪走行による作業が多く、高馬力での作業に使われます。
 このため、走行性は比較的安定しますが、回向や方向変換などでは操作を誤ると、機械の力に負けてしまい思わぬ動きにより横転や暴走など危険な状態になってしまいます。
 車軸作業では、走行が不安定になりやすく、機体の姿勢保持のため操作レバーを強く押さえつけるなどの力が必要となり、長時間作業では肉体疲労が増幅します。
 このため、疲労から来る注意力の欠如で事故を起こすこともしばしば見受けられます。

2.サイドクラッチの操作を熟知しましょう
 サイドクラッチは作業中の回向や方向変換時に使用するもので、高速走行中や傾斜がきつい場所での使用は厳禁です。

 急傾斜地やトラック等への積み降ろし時のあゆみ板上移動中にサイドクラッチを切ると、通常作業時の旋回とは反対の方向に、ハンドルが振られる事があり非常に危険です。ましてや左右両方のサイドクラッチを同時に切るなどはもっての外です。機械が暴走しオペレーターにぶつかるなどの事故も予想されます。  道路での高速走行はサイドクラッチを使用しないのが原則です。サイドクラッチを切ると車輪への動力が断たれハンドルが振られるため、急激に旋回したり、場合によっては横転、振り落とされ等の事故が発生します。

3.バックでの移動や作業は危険がいっぱいです
 バック時に運転者が機械と後方の障害物との間に胸や首を挟まれて死亡する事故も毎年発生しています。
 管理機や歩行型トラクターをバックさせると、タイヤの回転の反力で、ハンドルが持ち上がり、首吊り事故や足をとられて転倒し、その上に機械が乗り上げ負傷や死亡する事故が発生しています。
 後進時は後の障害物に注意し(ハンドルと壁等の障害物の間には入らない)
エンジン回転を低速にし、クラッチをゆっくりつなぎながら、ハンドルの跳ね上がりを押さえつつバックします。
 バック耕での作業時はバック歩行で足をとられて転倒し、耕耘爪に巻き込まれて負傷するなどの事例も報告されています。
 ほ場内での歩行作業は運転者が転倒する危険が大きいことを認識し、能率を上げようとして高速作業で無理をしたり、エンジン回転を規定以上に上げることの無いよう注意しましょう。

4.ハンドル回動を活用しましょう
 ハンドルが180度回転する管理機が普及しています。
 作業によってはハンドルを少し角度をつけ、機械が走行する条と運転者が歩行する条をずらす事で作業能率や精度の向上を図っているものもあります。
 また、180度ハンドルを回動させることで作業機の位置を前部に配置し、作業者の負担の軽減や作業精度の向上を図るものもあります。
ハウス内や果樹園など障害物の近くで作業する時は、ハンドルを回動させて作業します。移動作業のときは元に戻します。

180度ハンドル回動した管理機

5.牽制装置を解除したら必ず元に戻しましょう
 安全作業を確保するため走行レバーを後進に入れると作業レバーが作動しない等、牽制装置が設置されていますが、作業機によっては後進作業が必要となるため、牽制装置の解除が可能となっているものが一般的です。
 牽制装置を解除して作業した後は必ず元どおりに戻し、牽制装置が作動するようにしておきましょう。

コーヒーブレーク
 筆者の勤務する公園には展望台があり、そこからは富士山や箱根の山々と伊豆半島、三浦半島などの相模湾が一望でき、来園者に喜んでもらえる場所があります。
 展望台周辺は急な土手となっており、芝生を張っているため年に数回は芝刈り作業が必要となります。
 昨年は先輩が歩行用の芝刈り機もろとも土手を転げ落ちる事故が発生し、筆者も刈払い機で土手を滑り落ちる事故を起こしてしまいました。
 両事故とも負傷をするまでには至りませんでしたが、歩行用の機械はちょっと油断したり、大丈夫だろうと甘く見たりすると危険な目に会うことになってしまいます。
 幸いに、本年は事故の報告を受けておりませんが「初心忘るべからず」です

展望台からの景色。手前が急激に傾斜しています
小型管理機  完